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翻訳事始め - 第66回「翻訳者に必要とされる真の能力」
書評 - 「すべての望みを引き寄せる法則:夢を叶えるタッピング」
日本のプレゼンス低下への懸念

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「翻訳トーク」 2008年1月号のごあいさつ

明けましておめでとうございます。

皆様の年末年始はいかがでしたか。私は、12月の日本出張からオレゴンに戻ってきてからというもの、連日のしつこい咳と鼻水に悩まされ続け、会社を休むということはしなかったものの体調不良が続きました。この時期は、今までにもよく風邪を引いてはいたのですが、こんなに長く続くとは思っていませんでしたので、いくら40才台最後の年を迎えたからといっても、こんなに健康がいとも簡単に蝕まれるものなのかなと自分自身でも半信半疑でおりました。

日本では考えられないでしょうが、私のかかっている主治医は、いつも超多忙で、診察のアポを取れるのが3週間から4週間先というのが当たり前になっています。それでは、主治医にかかる意味などほとんどないに等しいのですが、とにかく4週間我慢して待って年末の診察に行ってまいりました。すると私がてっきり風邪だと思っていた症状が、実は1ヵ月半前に処方してもらった血圧降下剤の副作用であることが診察で判明しました。

どうもアメリカの処方箋薬は、日本人の私のとっては相当強すぎるようです。高血圧を抑える薬は毎日服用しますので、その副作用分も毎日少しずつ蓄積されてこうして症状として出ていたのだということを知りました。今は、その強すぎる処方箋薬は、直ちにストップして、別の(しかも日本の製薬会社の)最新の血圧降下剤を服用し始めてから、私の症状もようやく少しずつではありますが、改善し始めたところです。ただし、薬の副作用は、服用を止めた後でも3週間ぐらいは続くことがあると聞いて、全快するまでにはまだ少しかかりそうな気配です。

ということで、私の年末年始は極力どこにも行かずに家で妻と娘とで静かに家族で過ごしておりました。通常ですと、教会のクリスマス礼拝や合唱団のコンサートを聴きに行ったり、親戚や友人宅にお呼ばれするというパターンが多かったのですが、今回は大晦日にポートランドノウエストヒルに住む妻の妹宅に行っただけの外出でありました。外出がほとんどなかったので、それはそれで家にいて体も休まり、また家族と過ごしたり、最新の映画をDVDで見たりと、いつもの年末年始よりも多くのゆったりとした時間が取れてそれなりに充実したものになりました。

娘は、大学最後の冬休みの最中で、1ヶ月近く休みがあるのですが、家に大量の画材を大学から車で持ち込み、毎晩遅くまで卒業制作用の油絵の作業に取り組んでいます。今年の4月後半になると、大学にあるアートギャラリーのスペースを使って、シニア(大学4年生)の卒業制作展が開かれます。娘がこの冬休み中に取り組んでいますのは、この卒業制作展に出展する油絵の絵画数点です。どんな絵画を制作しているのか(本人は自分は写実派なのだと定義していますが)親の私にも今は秘密ということで見せてもくれません。

娘は、今通っているワシントン州タコマ市にあるUniversity of Puget Sound(通称UPS)を卒業した後は、アメリカ東部地域にある大学院に進学することを希望しています。現在3つの希望校があり、ナンバーワンの希望校は、Boston University(通称BU)のMaster of Fine Artsのプログラムです。第2希望としては、フィラデルフィアにあるPennsylvania Academy of Fine Artsで、第3希望はNew York Academy of Artsだということで、これから応募書類の作成と送付の準備もこれから始まるようです。

アート専攻の大学生はアメリカでは、卒業するまでに自分の制作したアートのカタログを作り、それを大学院の応募書類とあわせて志望大学院まで送ります。またそのカタログを自分のウェブサイト上に掲載して、公開するのも一般的であるようです。大学の教授からもそのようなカタログの作り方や自分自身と作品のPRの仕方についてもしっかりとした指導を受けます。そうして優秀な学生が大学院に受け入れられたり、作品がそれなりに評価されたりすれば、それはすなわち学生が在学していた大学や指導をした大学教授の高い評価にもつながりますので、当然大学からの学生に対しての指導にも熱が入るわけです。

3月後半に入ると今度は1週間ほどの大学の春休みがありますので、その時期を使って、本人はボストン、ニューヨークそしてフィラデルファイアに一人旅で各大学院を訪問し、実際に授業にも出席してみるということを計画しているところです。そのような旅行や卒業制作が控えていますので、娘は嬉々として毎日夜明け近くまで自宅のアトリエに閉じこもって油絵の制作に余念がありません。自分の好きなことが学べて、それで仕事ができて暮らしていくことができるならば、それは長い人生の中では最高の道でありますので、まだまだどうなるものかは当分わかりませんが、少なくとも自分の好きな方向に確実に進んで行っている娘には当分スローダウンする時間も暇もないようです。

Ken Sakai
President
kenfsakai@pacificdreams.org

Pacific Dreams, Inc.
25260 SW, Parkway Avenue, Suite D
Wilsonville, OR 97070, USA
TEL : 503-783-1390
FAX : 503-783-1391

 

   
 

Ken Sakai
President

翻訳事始め - 第66回「翻訳者に必要とされる真の能力」

最近私が日本人の若い翻訳者の方々と接してお話をしていたときに、翻訳者に必要とされる能力とは、どんなことが考えられますかという、きわめて単刀直入なご質問に遭遇いたしました。私は、少々考えた後に、語学力があるということを当然の大前提として、3つの能力に分けられるでしょうねと言って、話を切り出してみることにしました。まずは、文章の読解力、次に常識、そして最後にコンピュータスキルの3つを翻訳者の能力としてあげてみました。

その場はそれで終わったのですが、その夜になって、果たしてその3つの能力だけで本当に十分であったのだろうかという自虐的な思いがベッドの中で突然よぎり始め、目が冴えてきて眠れなくなってしまいました。結局ベッドから起き上がり、忘れないうちにと思い、頭の中をよぎった他の能力についても書き留めまして、ようやく静かなな眠りにつくことができました。

基本的には、先に申し上げましたこれら3つの能力が翻訳者にとって必要不可欠であることに対してまず異論はないものと思うのですが、それでもひとつひとつを検証してみたいと思います。初めに文章の読解力についてですが、それは言うまでもなくオリジナルのドキュメント(翻訳業界では“ソーステキスト”と呼んでいます)についての読解能力ということになります。

ソーステキストに書かれてある文章の意味を十分に理解した上で、翻訳する言語に書き写すことがまさしく翻訳作業そのものになるのですが、翻訳する言語上での表現力というのがここでは新たに問われてくる能力となるでありましょう。つまり、オリジナルの読解力と翻訳言語での表現力は一対の関係となっており、いくら英語の読解力があっても、日本語表現力が貧弱では、やはり翻訳者としては能力上、十分であるとは申せません。

次の常識でありますが、現在のように専門分野がいっそう細分化されてまいりますと、ある専門分野に強い翻訳者というのは、とても貴重な存在であります。このような翻訳者を英語では、Subject Matter Expert(SME)と翻訳業界などでは呼んでいます。しかしながら、ある専門分野においてどんなにSMEである翻訳者がいたにしても世間一般の常識に欠けるような翻訳者であっては、やはりよい仕事が出来る翻訳者ということにはならないでありましょう。その意味で、専門分野と常識とは車の両輪のごとく一対になっていて、共に評価され、それぞれの価値が効果的に発揮されてくるものかと思います。

最後のコンピュータスキルにつきましては、ワードやエクセルができますというのは、言うは易しなのですが、どちらも大変多くの複雑な機能があり、それぞれの機能を十分に使いこなすまでには、相当な熟練度と経験とが必要になります。また、一方で、翻訳途中で調べてみないことにはわからない専門用語や専門技術というものが山のように出てくることがあります。昔ならば、大百科辞典や公立図書館にでも行かなければわからなかった内容でも、今はすべてインターネットのサーチエンジンを使って瞬く間に検索をして、突き止めることが誰でもいともたやすくできるようになりました。

中には「検索の鉄人」と呼ばれるような方もいらっしゃるようですが、検索に関するノウハウやスキルというのも翻訳者にとりましては大変重要な能力のひとつになっています。コンピュータスキルと一口に言いましても、ソフトウエアの持っている機能を使いこなす能力、検索をするノウハウとは、それぞれに奥が大変に深いものがあります。私の経験上ですが、優秀な翻訳者の方々は総じて、コンピュータの達人であると呼べる方がほとんどであるような気がいたします。

最後にこれもすべての翻訳者にとっては大前提でありますが、気力、体力そして忍耐に勝るものはないのではないかと考えます。翻訳は限られた時間の中で行われる作業でありますから、常に時間との戦い、納期との戦いということになります。最近特にIT関係の分野では、短納期、大ボリュームというのが翻訳業界の趨勢となってまいりまして、仕事がくればもうその段階で、ストップウォッチを持って、スケジュールを組んでハイ、ヨーイドンという感じの有様です。それは製品サイクルがますます短くなり、開発から生産までのリードタイムのいっそうの短縮、そして一刻も早く市場に製品を投入し先行者利益を得なければならないという使命が企業サイドの至上命題になっているからにほかなりません。

それでは、翻訳するスピードの速いことも重要な能力になるのでしょうか。それは、YESでもあり、NOでもあると言えます。人間である以上、当然スピードが上がれば、見落としも増えますし、品質が犠牲になります。しかし、スピードは遅いよりは速い方がよいにきまっています。スピードを速くするためにソフトウエアの機能を使って、人間がやるよりもコンピュータにまかせてやってくれた方がはるかに速くて確実な場合には、コンピュータにその作業をやらせて、そこの部分でスピードを大いに稼ぐわけです。

この辺のスキルは、今後翻訳者として生き残っていくためのますます重要なノウハウになってくるものと予想できます。そうでないと、翻訳の仕事までもが中国やインドにすべて行ってしまうということになりかねないからです。現在、そのような兆候もすでに相当現れてきているといえます。翻訳者の真の能力とは、グローバル規模における大競争時代の中であっても十分通用することのできる、真にグローバルな能力であるといえるのかもしれません。

Ken Sakai
President
E-mail: KenFSakai@pacificdreams.org




この「翻訳トーク」を英語バージョンでもお受け取りになられたい方は http://www.pacificdreams.org/honyakutalk/signup.html までアクセスされ、必要事項をご入力して下さい。 (なお、日本語バージョンと英語バージョンとは内容が異なります。)

 
 

書評 - 「すべての望みを引き寄せる法則:夢を叶えるタッピング」ブレンダ 著春秋社 ・2007年9月20日刊・239ページ

12月に日本に出張で行った際、東京駅丸の内北口近くにある丸善本店で、ある書籍コーナーを見つけました。セミコンジャパン出展のために訪日していた私の妻と一緒に行きましたので、妻が最初に見つけたのが、欧米で大ベストセラーの“The Secrets”(日本語翻訳版の題名も「ザ・シークレット」)をはじめとする「引き寄せの法則(The Law of Attraction)」のコーナーでありました。

私は、The SecretsのDVDを見て、その映像に感化されてアメリカの書店で原文も買って、英語で早速読んでみました。その中に紹介されて出てくるのが、“The Law of Attraction”で、いってみればこの法則こそが“The Secrets”の著者が言わんとしている古今東西の賢者が密かに使っていた秘密であったのだということになります。私は、“The Law of Attraction”が日本語では、「引き寄せの法則」という言葉で翻訳されていることをはじめて本書籍コーナーで知った次第です。

著者名はブレンダとありますが、これはあくまでも彼女のペンネームでありまして、書籍をお書きになれている方は日本人女性です。彼女は、臨床催眠療法士の資格をお取りになられてセラピーの分野でご活躍されてきた方ですが、EFT(Emotional Freedom Techniques)と巡り会い、2004年からEFT-Japan(www.eft-japan.com)の代表をなされておいでです。本書の素晴らしい特徴は、引き寄せの法則とEFTとを実践的に結び付けていることで、ポジティブ思考だけではすんなりとは行き難い私たち普通の人間でも簡単に使えて応用ができるテクニックを詳しく解説してくれている点にあるかと思います。

本書ではないのですが、何かのビジネス書でポジティブ・シンキングによる問題解決は元々ポジティブ・シンキング志向の人が実践するからうまくいくのであって、ネガティブな部分を多く抱えている人がそのネガティブな部分をはじめから無視してポジティブ・シンキングだけを実践してみようとしても通常うまくいかないという記述を読んだことがあります。つまり、自分が持っているネガティブな部分を無視してはいけないのだということです。そのネガティブな部分をタッピングによって最初に押し出してやるテクニックがまさにEFTであるということを本書で知ることができました。

妻によるとEFTはアメリカではかなり浸透している心療セラピーのメソッドで、すでにEFTジャパンという組織が日本に出来ているということを知って、驚いていました。私もこのようなEFTのメソッドを日本人である著者が翻訳ではなく自らの体験を通じて日本語で書いて紹介をされているという意義は非常に大きいのではないかと感じました。英語の“The Secrets”をDVDで見たり原文を読んだりしてみても日本人としてはピンとこない多くの場面に突き当たりましたので、ブレンダさんの本書はとてもわかりやすく丁寧な日本語ですんなりと皮膚感覚として自分の内部に吸収することが出来ました。

「引き寄せの法則」も非常に的を射た記述をなされていますので、今まだ「引き寄せの法則」もEFTも知らなかったという方にはうってつけの入門書としてご推薦したいと思います。しかし、「引き寄せの法則」もEFTもともにシンプル極まりないものであるのですが、奥の深い教えが随所に満ちていることに感激しています。特に日本人は昔からの儒教や禅宗などから来る教えなどもあって、自分に対して厳し過ぎる嫌いがあり、私自身も含めてもっと自分のことを大切にする必要があるのだなとあらたな認識をすることができただけでも貴重な書籍との巡り会わせであったと感じています。


*Pacific Dreams, Inc. では、「すべての望みを引き寄せる法則:夢を叶えるタッピング」(春秋社:$32.00 Each, Plus Shipping & Handling $6.00)を在庫しておりますので、ご希望の方は、お電話 (503-783-1390) または、E-mailで bookstore@pacificdreams.orgまで、ご連絡ください。

 
 

日本のプレゼンス低下への懸念

ポートランド日本総領事館メルマガ1月号が元日の日に私のメールアドレスまで届きました。このメルマガによりますと2007年のオレゴン州に居住される日本人数が、6,254人(対前年比3.7%の増加)となり、これは在留邦人数の統計調査を開始した1976年からの最高の数字となったということで、2007年の人口が減少に転じる模様の日本本国とは対照的にオレゴン州の日本人の人口が確実に増え続けていることを知りました。その内訳はといいますと、留学生の方の増加率(7.7%)が顕著であったとのことで、また永住者数も昨年は80名増えている様子(対前年比2.2%増)でありまして、これは同じ永住者組の私としても嬉しい新年からのニュースでした。

しかしながら、こちらオレゴン州にいて日本人全体の数が増えている割には、日本人と日本に対するアメリカ世間一般の衆目度は毎年低くなり続けているように私の目には映ります。それはひとつには、昨年アメリカ人向けに日本人との間でのコミュニケーションやネゴシエーション、そしてプレゼンテーションに関しての効果的なやり方についてのセミナーを弊社で何度か開催したのですが、アメリカ人一般の参加者が激減してしまいました。またそのようなセミナーを自社で開きたいという企業数もやはり減少の一途という有様でした。

私の知り合いで、シンガポール出身でポートランドに住み、こちらで異文化コンサルティング会社を経営している中国系の女性を知っているのですが、彼女の対中国関係の異文化セミナーは大好評のようで、一般向けと企業向け、いずれもセミナーは大盛況だったと先日偶然ポートランド空港でお会いしたときに威勢のよいお話をお聞きしました。現在、アメリカと日本の間では特に話題に上がるようなテーマや貿易摩擦問題も見当たりませんので、日米関係自体、表面上では物凄くスムーズにいっているように見えるのかもしれません。一時期アメリカでも一世を風靡したジャパンアズナンバーワンや日本脅威論もまったく影をひそめてしまっております。日本はライバルなどという意識さえもアメリカ人のほとんどは誰も念頭にさえ置いていないように感じられます。

それもそのはずで、世界に占める日本の名目国内総生産(GDP)は、2006年度9.1%となり、24年ぶりに10%の大台を割り込んだという記事が12月27日の日経新聞の一面に載っていました。国民一人当たりのGDPも先進国クラブと呼ばれるOECD(経済協力開発機構)加盟30ヵ国中18位まで後退したということで、もはや先進国クラブとはいえその下位グループにかろうじてとどまる程度まで落ち込んでしまっているということであります。

この国際社会に対して、日本の地盤沈下の元凶はいろいろ考えられるのでしょうが、ひとつには世界の基軸通貨全般における円安であり、バブル崩壊後には当たり前となった経済の低成長、そして人口の減少ということになるのではないでしょうか。このままの出生率と高齢化が進むと2066年には、イギリスにも人口で日本は抜かれるという記事がやはり年末の日経新聞に出ておりました。人口が確実に減少していく将来を持つ日本が国と国民一人一人の豊かさ、そして国際社会の中でのプレゼンスを維持していくことは容易ならざる試練であるかと申せます。

アメリカ西海岸に暮らしていて、当地で日本との間のビジネスを常に主力商品として様々な業務を行っている私どもにとりましては、黙って看過することのできない問題であると映ります。オレゴン州の日本人数が増加しているというのは頼もしいことではありますが、増加している日本人がどのようにして自分たち日本人としてのプレゼンス自体をアメリカ人やアメリカ社会に対してアピールしていくことが出来るかをもっと突き詰めて考える必要がありそうです。今までそのような眼で見たりしたこともあまりなかったことでしたので、オレゴン州での日本人増加のニュースと沈みつつある日本の様子とが奇妙なコントラストをもってして、この年の始まりに私に何かの意味ありげなメッセージを送りこんでくれているような気に襲われているところです。

長文にもかかわらず、今月号も最後までお読みいただきまして、どうもありがとうございました。また来月号もどうぞお楽しみに!


Pacific Dreams, Inc.
25260 SW Parkway Avenue, Suite D
Wilsonville, OR 97070

TEL: 503-783-1390
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