第3回: ジョブ・ディスクリプションはお持ちですか?
HRMトークの第1回(2008年4月号)で、従業員ハンドブックならびに従業員ハンドブックを見直しすることの重要性について書かせていただきました。 従業員ハンドブックは、恐らくどこの会社でもすでに完備されているものだと思いますが、アメリカにおける企業経営で、従業員ハンドブックと同じぐらいに重要だといわれている社内の人事文書がもうひとつだけあります。 それが今回お話しするジョブ・ディスクリプション(職務内容記述書)です。
おそらくスモールビジネス(製造業で500人未満、販売業で100人未満)の範疇に該当する企業が大半でありましょう日系企業の場合、社内で完備すべき人事文書として、従業員ハンドブックとジョブ・ディスクリプションの2つさえあれば、とりあえずは、十分ではないかと私は考えています。 確かに100人を超す規模の会社では、従業員ハンドブックとはさらに別に、管理職マニュアルや製造業であれば、詳細な安全マニュアルなどがあった方が確かによいのですが、それも従業員ハンドブックとジョブ・ディスクリプションがあってこそ、生きてくるものでありますから、まずは、この従業員ハンドブックとジョブ・ディスクリプションの作成が先決となります。
ここで、指摘なのですが、日系企業の場合、あくまでも私の今までのコンサルティングを通じての経験則であえて数字を挙げればなのですが、ジョブ・ディスクリプションを作成されていない企業が全体の半分以上を占めるということであります。 つまり、ジョブ・ディスクリプションを持っていない企業の方が日系企業の中では多いのです。 これはいったいどうしてなのでしょうか。
まず、考えられますことは、このジョブ・ディスクリプションというものは、日本では存在しないという事実が挙げられます。 日本にはないので、その意味するところや重要性が実感として日本人経営者や幹部の方々には涌いてこないのではないでしょうか。 これについては、もっともなことだと思いますので、ジョブ・ディスクリプションがアメリカではどうして、従業員ハンドブックと同じくらいに重要な社内文書あるのかを少しご説明いたしましょう。
日本の雇用慣習とは異なり、アメリカの雇用慣習の中では、あくまでも一般的申し上げますと、アメリカ人はキャリア志向が強くあり、そのキャリア志向の中でもスペシャリスト志向であるということがいえます。 経理なら経理、資材なら資材で生涯を通じて、自分の持つスキルを磨き、自己成長していきたいと考える人が多い傾向が確かにアメリカ人にはあります。 それに比べ、日本ではそのようなスぺシャリスト志向の強い方もおいでにはなりますが、企業の中では、人事異動というものが慣行としてあるため、同じ場所にいて同じ仕事を生涯続けるということはほとんどありえないわけです。
それに日本とアメリカとではチームワークという共通の言葉は職場で使われてはいても、チームワークの概念が日本人とアメリカ人の持つものとは大きな隔たりがあります。 日本では、いったんチームが作られれば、その中で、お互いが助け合い、特別に忙しい人がいたら、その人に手を貸してプロジェクトを全体として進捗させていくのが暗黙で理解されているのですが、アメリカでは必ずしもそうでありません。 仕事が仮にある人のところで滞っていたとしても、それは個人の問題あるいは個人の責任として、受け取られてしまいます。
米国企業の中でもチームワークという言葉は使われていますが、チームの中のメンバーの仕事は明確に割り振りが決められていて、基本的には担当職務が他の人とは、重複しないようにと配慮がなされています。 もちろん万一のためにバックアップ要員ということを考えないわけではないのですが、それも日本とは違って自然発生的に誰かがいつの間にかカバーしてくれているというようなことはありません。 あくまでもチームリーダーの率先的な指示のもとに誰がバックアップに入るのかが決められます。
このように、アメリカの中で業務やプロジェクトを遂行していくためには、業務内容や役割分担を明確に定めたジョブ・ディスクリプションがあることが極めて有効であり、しかもアメリカ人のチームワークの考え方にもマッチしていることがお分かりになろうかと思います。 しかし中には、日本式のチームワークのよさもアメリカ人に理解してもらい、実践してほしいと願っている日本人のトップの方々も少なからずいることを知っています。 それはそれで、OJTなどを通じて、日本人の仕事の進め方のよい点をしっかり教育すればよいわけで、ジョブ・ディスクリプションを作る、作らないの議論とは線を引いて考えていただいたらよいのではと示唆する次第です。
ジョブ・ディスクリプションは、確かにアメリカ人の社員のいるところでは必要かもしれないが、うちの社員のほとんどは日本人とアジア人だから、今までにジョブ・ディスクリプションの要求など一度もなかったとおっしゃる方もいらっしゃるかもしれません。 確かにそのような会社では、別にジョブ・ディスクリプションをわざわざ作らなくても、別段、日常の業務で困ることはなかったかもしれません。 しかしながら、ジョブ・ディスクリプションは、単に日常業務の役割分担だけを書いているのではなく、企業の内外にあって実はさまざまな意味合いを持つ、企業にとってはまさに中核(コア)的な人事文書でもあるのです。
ジョブ・ディスクリプションがあることによって、企業内のしっかりとした給与システムやジョブ・ストラクチャーの構築がやりやすくなります。 また、社員の実績評価や昇進、さらにはキャリアアップ、スキルアップのためのトレーニングなどにも、社内でのガイドラインとして使うことができます。 対外的には、万一従業員から訴訟などを起こされた場合には、ジョブ・ディスクリプションがきちんと完備されているとこによって、企業側を守る有利な証拠文書になってくれます。 もしジョブ・ディスクリプションがなかったということであれば、訴訟や裁判で、企業側がきわめて不利なポジションに置かれることが容易に想像がつきませんか。
このように、社員の構成員や日本的なチームワークの云々にかかわらず、アメリカの企業経営の中では、自分以外に社員が一人でもいるのであれば、ジョブ・ディスクリプションは、なくてはならない社内文書です。 弊社では、“ひな形”としてのジョブ・ディスクリプションのフォームを数多く持っています。 まずはそのようなひな形を使って、ジョブ・ディスクリプションを書き起こしてみることをお勧めいたします。 弊社にお問い合わせいただけましたら、ひな形の中から貴社に最もマッチングするようなジョブ・ディスクリプションを選んでお送りすることが出来ます。
最初から完璧なジョブ・ディスクリプションなど、どの会社におきても出来っこありませんので、“ジョブ・ディスクリプションはないよりはあった方がはるかにまし”というスタンスの元でまずは作成にトライしてみてください。 これは経験から言う私の私見ですが、70%以上の職務内容がジョブ・ディスクリプションに書かれてあるのでしたら、それはもう立派なジョブ・ディスクリプションとして十分通用いたします。 もちろん、職務内容は、変化していくものでありますから、従業員ハンドブック同様、最低でも2~3年ごとに見直しを行い、改訂していく必要があります。 弊社では、1年に1回ある社員の実績評価の際にあわせてジョブ・ディスクリプションの見直しを評価をする社員ととも行うことにしています。
Ken Sakai
President
kenfsakai@pacificdreams.org
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上記記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的アドバイスと見なされるべき類のものではありません。ここに含まれている内容はあくまでも概括的なものであり、個人や企業の法的、または事実に基づく諸々の状況には必ずしも適合しないものかもしれません。 弊社は、法律事務所ではありませんので、何らかの法的行動を起こされるような場合には、必ず専門の弁護士にご連絡の上、ご相談してくださいますようお願い申し上げます。
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