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2008年10月号

第7回: 不況期における従業員トレーニング

9月に起こったリーマン・ブラザーズの破綻から早1ヶ月が過ぎ、アメリカをはじめ世界中に金融危機と前後して、恐慌とも思える世界同時不況の足音が響いてまいりました。 この金融危機と実体経済に負の影響を現し始めた不況の波は、一体どのくらい続くものか、あるエコノミストによれば全治5年だという人もいれば、来年いっぱいだという経済評論家もいて、まったくもって混沌とした状況です。 このような心理的にも不安と焦燥感とが募るこれからの不況期の到来に対して、経営者や管理職はどのように事態を受け止めて、行動につなげていけばよいのでしょうか。

一番手っ取り早い方法は、人員の削減、つまりレイオフだという方がいらっしゃるかもしれません。 先ずは、人材派遣会社から派遣できている人員のカットから手をつける企業があるかもしれません。 配置転換や労働時間カットなどを行うも、いよいよとなったら、自社正社員の雇用にも手をつけざるを得ないという事態になることだってありうるかもしれません。 しかしながら今回のこのコラムでは、そのような手順の具体案を申し上げるつもりは毛頭ありません。 そのような悲観的なシナリオは、もっと後になってからでもご相談にお乗りしますので、先ずは、不況期でも悲観的ではないシナリオとして今回は少しでも元気の出るお話させていただきます。

 

冒頭にも書きましたように、景気の好不況には必ずやサイクルというものがあります。 景気がよいときも悪いときも、それは未来永劫に続くわけでは決してありません。景気がよければ、いずれ景気の下り坂が訪れ、バブルも間違いなく弾ける時がまいります。 一方不況の方も同じくいずれかの時点で反転に転じ、不況期から脱する時期が必ずや訪れます。 今は不況期に入ったばかりの段階であるかもしれませんが、いずれ不況の峠を越えれば、景気回復が始まります。 そのときに、もし優秀な従業員が皆辞めてしまったり、レイオフされたりしていれば、肝心要(かなめ)の景気の回復期に一体誰が企業業績の好転に寄与してくれることが出来るというのでしょうか。

私の考えですが、不況期は、残すべき従業員を選択できるよい時期なのではないかとも思います。 猫の手も借りたいというような繁忙期には、例え少々平均的能力に達していない従業員がいたとしても、我慢してそのような従業員を使い続けることだってあるでしょう。 しかし、仕事が減ってきて、人員に余裕が出来てきたときには、やはり能力の低い従業員から何らかの手を打っていく必要はあると思います。 そのときに重要であるのは、他の従業員、特にいつまでも残っていてもらいたい優秀な従業員に与えるネガティブな影響です。 能力の低い従業員の削減などが、今後も残ってほしい従業員へのモチベーション低下を起こすようなことだけは避けたいわけです。

人間というのは、感情の動物でありますので、仮に数字で示された実績評価フォームが定期的にかつ公正に記録されていたにしても、同じ釜の飯を食った仲間の人が職場を去らなければならないというのは、誰にとっても悲しいものです。 特にそのような場合には、職場に残る従業員に対して、新たなモチベーションを与えてあげる必要があります。 会社側が何もしないのであれば、不況期で全般的に仕事や新規事業などがただでさえ減っている中では、従業員全体のモチベーションはいやがうえにも下がっていくだけとなってしまいます。

そのような中で、残る従業員への考えられうる最も確かなモチベーション・アップの手段は、不況期であってもトレーニングを従業員に提供するということです。 私たちのようなセミナーやトレーニングを提供している者にとりましては、不況期になるといっせいにこれらトレーニングやセミナー参加に使う経費や予算を何はさておいて先んじてカットしようとされることを経験上知っています。 それでは、今度は景気が回復してきたときは、どうでしょうか。 やはりほとんどの企業では、生産や販売などの自社業務で超多忙となり、忙し過ぎて従業員をセミナーやトレーニングに出させるどころではない状態になり、やはり企業からの参加が出てこないのが現実なのです。

忙しくないときも忙しいときもいずれにしましても、従業員へのトレーニングは、二の次、三の次というのが多くの企業、特に残念ながら日系企業さんのご実情なのではないかとお察し申し上げます。 それであれば、景気が回復し、繁忙期になってからでの従業員トレーニングは、不況期に時間に余裕があるときと比べると、より困難になるのではないかと思われます。 時間に余裕のあるこの不況期こそが従業員トレーニングに時間を費やせるチャンスであり、またとないタイミングではないでしょうか。 従業員にとっても、不況期にトレーニングを提供してくれる会社に対しては、忠誠心がいっそう芽生えることが期待できますし、何よりも仕事に対してモチベーションが維持され、スキルアップが促されます。

トレーニングは、不況期に出来る費用対効果の高い人的投資のひとつです。 景気が回復するまでの間、残っている時間をぜひとも有効活用してみようではありませんか。 そして景気回復期に一挙に従業員全員が仕事に邁進することが出来るような体制をこの不況期の中から作り出してみられてはいかがでしょうか。そのようなチャンスの時期であるととらえてみると、不況期もあながちすべてがネガティブであるわけでもないと言えます。

 


Ken Sakai
President & CEO
kenfsakai@pacificdreams.org

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上記記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的アドバイスと見なされるべき類のものではありません。ここに含まれている内容はあくまでも概括的なものであり、個人や企業の法的、または事実に基づく諸々の状況には必ずしも適合しないものかもしれません。 弊社は、法律事務所ではありませんので、何らかの法的行動を起こされるような場合には、必ず専門の弁護士にご連絡の上、ご相談してくださいますようお願い申し上げます。


   

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