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2008年11月号

第8回: 事業縮小や撤退が現実的な選択肢となった場合

まさに日を追うごとに、アメリカの危機的な景気後退(リセッション)ならびにアメリカ発のこの未曾有の大不況が世界中に瞬時のうちに飛び火していくのが実感として感じられ、まさに戦慄さえ覚える今日このごろです。 アメリカ全土の平均失業率は、10月で6.5%に達し、今後もまだまだ増え続けそうな気配です。 私の住むオレゴン州では、7.5%の失業率です。 アメリカ西海岸地域は、いずれの州も失業率が全米平均レベルよりも高いようです。

さて、このような雇用の深刻さを増す経済状況の中では、当然のことながら、事業の縮小や統廃合、ないしは売却や撤退ということも、もはや他人事ではなく、現実的に考えなければならない選択肢かもしれません。 そのような極めて辛く厳しい決断にせまられる際に常についてまわるのは、現在働いている自社従業員への対応です。 気をつけなければならないのは、その対応をひとつでも間違えると、企業は、従業員からの「差別」を理由とした訴訟問題に巻き込まれる可能性が高いということです。 これだけは、企業として絶対に避けなければなりません。

以下は、事業の縮小や撤退などにともなって、どうしても従業員をレイオフしたり、解雇したりしなければならない場合における(あくまでも)一般的なガイドラインとなります。

  1. 労働者数調整ならびに維持通告法(The Workers Adjustment and Retraining Act, 1988)、通称 ”WARN” と呼ばれるこの法律(連邦法)の規定に従えば、100人以上の常勤勤務者がいる工場などの事業所で、操業停止や事業所の閉鎖などにより、その期間が6ヶ月以上で、かつ50名以上、あるいは33%以上のどちらかで、フルタイムの常勤勤務者が休職、あるいは失業になる場合には、雇用者は、少なくともそれらが実施となる60日前までにその通告を文書によって行う義務があります。 また、その事業所のある州の雇用局(State Employment Division)や地方自治体の代表者(市長)、さらに日系企業の場合にはほとんどないでしょうが、従業員の一部が組合に属しているケースでは、その組合の代表者に文書でやはり通告をしなければなりません。(いずれも60日前までとなっています。)

  2. WARNでは、パートタイムで働く勤務者や派遣社員、あるいはコントラクターに対しては、基本的には通告義務を規定してはいないのですが、それでも“影響を受ける従業員”として、やはり雇用者は60日前までに同じく通告を文書で出す必要があります。

  3. ただし、操業停止や工場閉鎖が通告しなければならない60日前までの時点では到底予測のできない経営事情や経済情勢の急激な悪化による事業不振、さらに天変地異やテロなどによる甚大な障害などが突然発生したような場合には、60日未満での通告が許されることがあります。 そのような場合であっても、雇用者は通告可能な範囲内で速やかに通告を出し、どうして通告期間が60日未満であったのか、その理由を文書できちんと説明しなければなりません。

  4. 操業停止や工場閉鎖までに至らなくとも、従業員の時短や一部レイオフをしなければならない場合には、対象となる従業員全員にできるだけ公平に処置を行うことを先ずはお勧めします。 一例ですが、例えば、工場の操業を週5日間ではなく4日間に短縮する、オフィスで働く人間もそれに合わせて週4日間の勤務時間にするなどの対応で、全員が同じ時短になるという処遇であれば、少なくとも誰かが会社から自分だけが差別を受けたというような法的クレームはつけられないことになります。

  5. 従業員への時短を進める上で、ワーク・シェアリングや人員の配置換えなどは、レイオフや解雇などに比べれば、従業員に与えるインパクトははるかに少ないわけですので、早いうちからこのような手立てが社内で可能であるかどうか、まずは今すぐにでも検討してみることをお勧めしたいと思います。

さらに、事業所が閉鎖したり、レイオフが敷かれた場合には、すべての従業員は、州法によって決められている最後の給与払いに関しての規定と、さらにほとんどの州では、解雇時支払額とその計算方法とが規定されていますので、それらの規定に従って企業側は正しく対応しなければなりません。 それらの規定は、もちろん各州にある州法で異なります。 ただし、解雇に伴う退職金支払い(Severance Pay)に関しては、そのような支払い義務を法的に課している州法というのは今のところまだありません。

ですから、企業が解雇時に退職金を従業員に支払うかどうかということに関しましては、州法などによる法律の問題なのではなく、もっぱら企業の持っているポリシーや企業慣行によるものとなります。 あくまでも会社と従業員との間で取り決めすることのできる同意事項ということになります。 とはいえ、そのような退職金支払いもある程度の世間相場というものが存在しているのも事実です。 その世間相場も最近は、この危機的ご時世のもとでは、退職金支払額の値下がりが顕著になっているということも耳にしています。

 


Ken Sakai
President & CEO
kenfsakai@pacificdreams.org

お断り

上記記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的アドバイスと見なされるべき類のものではありません。ここに含まれている内容はあくまでも概括的なものであり、個人や企業の法的、または事実に基づく諸々の状況には必ずしも適合しないものかもしれません。 弊社は、法律事務所ではありませんので、何らかの法的行動を起こされるような場合には、必ず専門の弁護士にご連絡の上、ご相談してくださいますようお願い申し上げます。


   

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