第14回:第三者機関としてのコンサルタントの上手な使い方
前回4月号のHRMトークでは、「 弁護士とコンサルタントとの線引きとは?」というテーマで、弁護士とHRコンサルタントとの間でいかにして上手に使い分けしていくことができるかという点について、ご案内といいますか、自説を書かせていただきました。 今回は、もっと広範にHRコンサルタントを第三者機関とみなして、企業として活用してみるノウハウについてお話をしてみたいと思います。
例えば、ある企業内で多くのExempt Employee(残業代支払い義務を免除された従業員)が、毎週金曜日になると半日だけの勤務で午後はもうオフィスにはいない、したがって金曜日午後にどうしてもミーティングを開きたくても、ミーティングが出来ないといったことが起こっていたとします。 それなら単純に金曜日の午後はミーティングなどを開かなければよいではないかという議論は脇に置いておくことにして、このような不満が、経営陣からだけではなく残業代支払い義務のある従業員、つまりNon-exempt Employeeからも噴出してきたとします。 皆様の会社でも同じようなことが今までに現実として起こったことはありませんでしたか?
そこで、この不満を社内のHR部門に挙げたとします。 担当のHRマネジャーは、Exempt Employeeは、時間で規定されて働いている時間給の従業員ではないので、金曜日の午後にオフィスにいようがいまいが、Non-exempt Employeeと同じようには、勤務時間内での強制や義務を負わせるわけにはいかないという判断から、この不満について何ら対応することはしなかったとします。 確かにHRマネジャーのこの(何もしなかった)判断に対して、HRマネジャーの上に立つ日本人のジェネラル・マネジャーとしては、本当にその判断で自社組織としてはよかったものかどうか、誰かに訊いてみたいという衝動に駆られたとしてみましょう。 その誰かと云うのは、恐らく社内でHRマネジャー以上の適任者を見つけるのは、難しいでしょうから、外部のまさに第三者機関であるHRコンサルタントに意見を求めてみるという方策が考えられるわけです。
もちろん、この外部の第三者機関をHRコンサルタントではなく、弁護士に訊いてみるという選択肢もあります。 ただし、これは前月号で書きましたとおり、直接訴訟問題に絡むようなことではありませんので、何も高い弁護士費用を支払ってまで訊くだけの価値のある内容であるかどうかは、ぜひ真っ先に検討してほしいことだと思います。 仮に、弁護士に訊いてみたにしても、彼らからの回答は、HRマネジャーの判断を法的な原理原則から正統なものとして支持するだけに終わってしまう可能性が高いのではないかと思われます。 それは、法の番人であるポジションにあるプロフェショナルとそうでないプロフェショナルとでは、現実的にどこに優先順位をもってくるかで、おのずと出てくる回答にも違いや差が生じるものだからなのです。
もちろんHRコンサルタントは、弁護士ではないからといって、法律に反するような方策を指導するようなことが決してあってはならないことは云うまでもないことです。 しかしながら、すべての領域を法律に書かれてあるか書かれていないかという観点だけで、判断することができないのも現実世界の宿命です。 法律が関与できない、あるいは関与すべきでないことも世の中にはたくさんありますし、それは企業の中であっても状況は、大同小異です。 話が前後してしまいましたので、Exempt Employeeの金曜日の就業時間に関して、話題を元に戻しましょう。 私はHRコンサルタントですので、弁護士やHRマネジャーの言い分とは異なった見解を示すことになるかもしれませんが、以下が私の見解であり、ジェネラル・マネジャーに対してリコメンドする内容となります。
金曜日午後の就業時間に限らず、従業員ハンドブックまたは、管理職ハンドブックの中に、会社としてのコア時間(例えば「午前10時から午後3時まで」)というものを規定しておきます。その時間内には、休暇や病欠などを取っている社員、ならびに自宅勤務や外回りの営業職として認められている社員以外は、「基本的に全員オフィス勤務をしていることを期待する」と書くことは、Exempt Employeeの定義からしてみても、決して法律違反になるようなことではありません。 もし、決められたこのコア時間に会社に来れないということであれば、その日は、欠勤扱いとするか、本人の持っているバケーション・タイムをあてがってもらうという規定にしておきます。
これらの領域は、確かに白黒の着かないグレーなところがあるのは事実ですが、個々の企業内の独自裁量として決めてよい部分であると私は考えていますので、それらを従業員ハンドブックや管理職ハンドブックに反映させ、明確に記述しておけばよいわけです。そのためには、現在持っている従業員ハンドブックまたは管理職ハンドブックの改訂を行う必要があります。 そうすれば、その企業で就業する社員への勤労に対する価値感としてコア時間が非常に重要であるというメッセージを例外を設けることなく、企業の文書として全社員に伝えることが出来ます。 ポリシーは一貫していることが大事であり、それは企業それぞれが持っている価値観によって成り立っているわけです。
最後になりますが、先月号と今月号の記事は、何も私がHRコンサルタントとしての手前味噌で書いた記事なのではなく、皆様のご判断であくまでもケースバイケースで弁護士とHRコンサルタントを上手に使い分けしてほしいという目的で書いたものです。 ですから、この記事をお読みになります日系企業の皆様に賢明で費用対効果の高い使い分けをしていただきたいのです。 上手な使い分けをすることによって、より少ないコストで、企業として目指すべきところでの目的を確実に達成してほしいのです。
さらに、弁護士とHRコンサルタントも今後はお互い協業していけるようにしてまいりたいと考えております。 HRコンサルタントだけでは、解決できない内容の依頼であれば、それを私の範疇だけに留めておくようなことはすべきではありませんので、そのような場合であれば、然るべき経験豊富で良心的な弁護士の方を皆様にご紹介させていただいております。 良心的なコンサルタント、あるいは弁護士であれば、最初の1時間は無料で話を聞いてくれるはずです。 もちろん、私のHRコンサルティングの一番最初の1回目(1時間まで)は、無料でご対応させていただきますので、どうぞお気軽に私までご連絡ください。 皆様からのご連絡をお待ちしております。
Ken Sakai
President & CEO
kenfsakai@pacificdreams.org
|