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2009年10月号

第17回:新型インフルエンザと連邦労働法

いよいよ10月の声を聞きますと、これから1日ごとに秋が深まってくるシーズンの到来となりました。 とともに、気温や外気の湿度が下がり始めますと、風邪の季節の到来でもあるわけです。 そして秋から冬に向けての世界的な一大懸念は、申し上げるまでもなく、今年7月にWHO(世界保健機関)によってクラス6のパンデミック(世界的大流行)にまで指定された新型インフルエンザによる脅威です。

1900年代初頭に世界中で大流行を起こし、かつて400万人以上が亡くなったというスペイン風邪と同じ、H1N1型のこのインフルエンザは、日本語では新型と呼ばれることが多いのに対し、英語では、”Swine Flu”(つまり「豚インフル」)と表記されることが多いようです。 ただし、今回の新型インフルエンザは、ご存知のように、感染力は非常に高いものの、猛威を奮ったかつてのスペイン風邪のような強い病原性は持っていないということになっています。 しかし恐ろしいのは、このインフルエンザ・ウィルスは豚の体内に長年潜伏し、新しいウィルスとしてさらに進化を続けてきているということで、感染力だけではなく、いつその病原性や毒性をも高めて再び人類を襲ってくるのか予測がつかないという点にあるかと思われます。

さて、この秋から冬にかけて季節性インフルエンザとともに新型インフルエンザが、世界的流行になり、多くの感染者が発生した場合、企業活動にも直接関与してくるアメリカの連邦労働法があるということを皆様はご存知でしょうか。 今回のHRMトークでは、新型インフルエンザと労働法の関係について、あらためて考察してみることにしました。 関与することがはっきりしている労働法は、最低でも3つあります。 FMLA(Family Medical Leave Act: 家族医療休暇法)、ADA(Americans with Disabilities Act: アメリカ人障害者法)そしてOSHA(Occupational Safety and Health Act: 職業安全衛生法)の3つです。

それでは、まずFMLAです。 この1993年に制定されたこの法律は、従業員が勤務期間の12ヶ月の中で12週間を上限とする無給休暇の取得を半径75マイル以内に従業員数50名以上を擁する企業に対して義務付けているものです。 この法律を詳しく見てみますと、健康状態の悪化が原因で従業員ならびに従業員の家族が就労不能な状態(英語では、”incapacity” と呼ばれます)が3日間以上継続した場合には、その後に必要とされる治療に費やすために欠勤を余儀なくされる日数については、従業員は会社に対してFMLAの適用ができるというものです。 もちろん、FMLAの適用を従業員が会社に申し出するためには、医師からの診断書などを同時に提出する必要があります。

二番目として、出てくるのが1992年に制定されたADAです。 この法律は、従業員数15名以上の企業が対象となるものですが、この法律でも従業員本人の健康診断や子供の通っている学校や保育施設において学級閉鎖などがあったような場合で、他に子供の面倒を見てくれる人や施設がないような場合には、ADAは、職場の欠勤を従業員の権利として認めています。 特に随時CDC(Centers for Dieses Control and Prevention: 米国疾病予防対策センター)が関与するであろう、今回の新型インフルエンザの場合であれば、州や地域の公的機関の勧告に従って、家で待機をしなければならない場合には、ADAのもとに、企業は従業員の欠勤を認めるか、自宅勤務を奨励するかしなければなりません。 その辺のところは、基本的には企業ごとの裁量に委ねられているのが現実なのですが、要は、企業として、従業員に対して ”Reasonable Accommodation” (「合理的な便宜」を図ってあげること)を提供する義務が生じてくるということです。

そして三番目に挙げられるOHSAですが、もし同じ職場(オフィス)の中に明らかにインフルエンザに罹患しているのにもかかわらず、休みをまったく取らずに年間の皆勤賞を取ることを理由に毎日出勤していた人がいたとしましょう。 そのような人が働いているオフィスでは、他の人もインフルエンザに感染してしまう確率がかなり高くなるわけですから、従業員の権利として、OSHAでは職場を欠勤することのできる権利とそのようなインフルエンザに罹患している人が職場に来ていることを企業が許しているいうことを企業側に対して従業員が法的な申し立て(クレーム)を申請(ファイル)することのできる権利とを認めています。

以上が直接的に関与する3つの労働法の適用状況でありましたが、他にもCivil Rights Act Title VII(公民権法第7章)やHIPAA(Health Insurance Portability and  Accountability Act: 医療保険の携帯性と責任に関する法律)などの法律におきましても、インフルエンザが引き金で起こりうる従業員の出身国上における差別問題(豚インフルエンザの発生はメキシコで当初顕著であったため、もしメキシコ出身者がそのために差別を受けるような場合)や従業員個人の医療情報の漏えい問題などがあった場合などには、これらの法律によって、大いにかかわりが出てまいります。

さて、リスク管理として新型インフルエンザに対するパンデミックへの社内対策計画を練るときに、これら労働法の中味を十分考慮に入れながら、自社の安全と健康に関するポリシー、そして病欠(Sick Leave)、出張、自宅勤務(Telecommuting)に関する一連のポリシーなどもこの際、一度徹底して洗い直してみられますことをお勧めしたいと存じます。 これらを見直すことによって、直接的に企業の責任賠償問題(Liability)にまで発展するリスクを軽減することができます。 そして事前の対策ならびにその対策を従業員に対して全社的に徹底を図ることがいっそう重要な局面となっていることをぜひとも認識していただければと思います。 貴社のこれらポリシーの見直しなどにつきましては、ぜひ弊社までお気軽にご相談くだされば、お力になることが出来ます。


Ken Sakai
President & CEO
kenfsakai@pacificdreams.org

 


   

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