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2008年10月号

「翻訳トーク」 2008年10月号のごあいさつ

アメリカのサブプライムローンから端を発した住宅バブルの崩壊からアメリカ経済ばかりでなく、グローバルレベルで、世界経済はここ1ヶ月の間で大変なことになってきました。 ニューヨークのダウジョーンズでの極度な落ち込みは瞬く間に世界の株式市場に飛び火をして、手がつけられないほどの乱降下にどこも見舞われています。 そんな中でアメリカ大統領選は投票日まで最後の1週間を切りました。

主力マスメディア系の世論調査では、オバマ候補がマケイン候補に10ポイントあまりの大差をつけて当確ラインとされる270の選挙人代議員数をすでに超えているという調査結果が出ているとさえ一部では発表になっています。ではどうしてこのようなオバマの断然有利な予測が出てしまっているのでしょうか。 一言で言い表すことはとても難しいのですが、今まで8年間続いたブッシュ政権へのアメリカ国民の大いなる失望とあわせて、レーガンの時代までさかのぼる、共和党主導によるいわゆるレーガノミックスへの反動がここにきて、国民の間で一気に爆発しているのではないかという気がいたします。

3回にわたる大統領候補同士による公開テレビ討論会を見ていても、オバマのキーとなるメッセージは、規制緩和や民営化によって、不動産業界や金融業界は当局の目をかいぬぐって、どんなことでもできるようになり、行き過ぎた自由主義経済や市場型経済が何でもまかり通り、富める者だけが富み、弱者はいっさい切り捨てられてきたという主張です。 これは、レーガンの時代から始まった共和党の伝統的な経済政策であり、政府の関与を出来るだけ少なくして、すべてを民間や市場に委ねるというポリシーです。 この主張については、マケインが共和党員である限り、ブッシュ政権との違いを打ち出すことは出来ず、オバマからの指摘についても何ら有効な反論が打てていないということをアメリカ国民は如実に見ているからなのです。

英語で“Privatization”という言葉があります。 日本語に訳すと「民営化」という意味になります。 今回の大統領選挙ならびに上院選挙で、民主党が選挙キャンペーンに頻繁に用いているキーワードです。 日本でも古くは国鉄や電電公社の民営化があり、最近ではちょうど1年前の郵便局の民営化があったばかりです。 民営化という一種魔法の言葉が独り歩きをして、世界中で民営化することこそが国家生き残りの道であり、業務の効率化と財政難圧縮への最良の処方箋であると、各国の国家主席のみならず、一般国民の多くも信じて疑ってこなかったのではないでしょうか。

その民営化の大御所であり、本家本元であるはずのアメリカでその信念が今現在、大いに揺らいできているのです。 そしてオバマをはじめ、民主党候補者はまさにその点を今回の選挙戦で巧みに突いています。 現実として、ブッシュ政権は、共和党政権であるにもかかわらず、今回の金融危機回避のために公的資本注入を打ち出しました。 また、何十年も前に民営化されていた、ファニーメイとフレディマックスの2つの住宅金融公社に対しても公的資金の投入が決まり、政府の公的管理下に組み込まれた形となって、もはや民営化とはいえない状況になっているのです。

このような状況において、市場経済主義と小さな政府とを心底信奉するマケインの言動や態度は、軸のぶれたものに終始映りました。 それに比して、オバマの言動や態度には一切ぶれたところがありませんでしたので、国民はこのような金融危機に際して国のリーダーシップを取ることのできる人物であるとオバマの資質を見て取ったのであります。 マケインは、オバマを社会主義者であるなど最後の中傷(ネガティブ)キャンペーンで捨て身で張っているようですが、悪あがきでしかないですね。

アメリカは、ここに来て行き過ぎた市場経済主義や民営化という呪縛から路線変更を余儀なくされることになります。 これはアメリカのみならず、世界の主要国家にも同じような流れが今後出てくることになりそうです。 改革だと称して、民営化や市場化を推し進めてきた政治家や官僚は今後軌道修正を迫られることになるはずです。 さらに企業経営者をはじめ、民間組織で働く一般の人々の間にも、パラダイム・シフトが起きるような予感がいたします。 経済だけでなく、社会そのものの構造から手をつけていかなければ、今回の金融ならびに経済の危機には、有効な手立てはそう簡単には見つからないものと思います。 まあ何はさておき、来週火曜日に行われる大統領選挙の結果にまずは衆目を一致させてみるといたしましょう。


Ken Sakai
President & CEO
kenfsakai@pacificdreams.org

   

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