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2008年9月号

「翻訳トーク」 2008年9月号のごあいさつ

今年は北京オリンピックも先月で終了し、今年残された4年に1回のうるう年にあるもう一つの最大級のイベントは、11月4日(火)に行われるアメリカの大統領選挙となりました。 北京オリンピックは、期待されたほどの経済波及効果がなかったようで、低迷する今年の経済情勢を打開するほどのカンフル剤にはなりませんでした。 一方のアメリカ大統領選挙は、来年以降の4年間のアメリカならびに世界の政治と経済の枠組みを決める、オリンピックに比べてみても、はかりしれないインパクトを持つイベントになります。

この「翻訳トーク」の番外編として、オバマ候補の民主党予備選での勝利までの経過について、すでに何回か皆様にお伝えさせていただきました。 8月終わりに開かれた民主党大会、そして先週行われました共和党大会を経て、アメリカにある二大政党の正副大統領候補が正式に選任されました。 その中では、共和党側の人選で、大きなサプライズ人事がありました。 また共和党大会中にハリケーン「グスタフ」が以前に「カトリナ」で破滅的なダメージを受けたニューオリンズに接近するという緊急事態の発生があり、ブッシュ大統領が党大会出席を見送ったということがありました。

驚きの人選や自然現象にも左右されて、今やアメリカは共和党のマケイン候補が民主党のオバマ候補と互角かそれ以上に支持率を伸ばしているという世論調査の結果が出てきています。 多いに盛り上がりを見せ、有名人やアーティストなども多数参加して派手に催された民主党大会に比べて、共和党大会は、参加者数やその盛り上がりの面でもあまりパッとしたものであったとはいえませんでした。 しかし、マケイン候補が副大統領候補として、アラスカ州知事のサラ・ペイリン氏を選んだというのは、ハリケーン「グスタフ並み」のインパクトがアメリカ全土に渡って駆け抜けたと申し上げても過言ではないでしょう。

その強烈なインパクトは賛否併せ持つものでありましたが、その後の世論調査結果の推移を見守っている限りでは、どうもマケイン側に有利な足取りを促しているように見えます。 共和党大会の直前に発表した、ペイリン候補について、メディアは、彼女に関してのいくつかの過去のスキャンダルを掘り出して、報道しました。 そのいくつか報道された自身のスキャンダルの中で、長女であるブリストルさん(17歳)の妊娠という事実と、一番下のダウン症の障害を持つお子さんのことでありました。 ただしブリストルさんの妊娠については、メディア側からのスッパ抜きではなく、ペイリン候補自らの声明という形での発表でしたので、それに対して賛否両論がアメリカ中で湯水のごとく溢れ出ました。 しかし、これはもとから計算づくによる声明発表だったのかどうかの真意は知る由もないのですが、今のところ、大方の予想に反してアメリカの世論の中では、受け入れられている模様ですから、かなり意外だというほかありません。

ペイリン氏の共和党副大統領候補への受諾演説でも、彼女の度胸の据わったスピーチぶりや庶民性のアピール(自分は“ホッケーママ”だというローカルな表現を用いていました)、家族愛やアラスカでの油田開発推進など堂々とした主張ばかりでした。 はっきり言って、アメリカの中でも忘れられがちな辺境地帯にあるアラスカというローカル・コミュニティから突然全米ネットワークに対しておよそ見事なデビュー戦を演じ切ったのも、共和党初の女性副大統領候補のこのペイリン氏でした。

これで、すでに11月4日まで2ヶ月を切った大統領選挙の行方はまったくわからない状況となりました。 この間に、3回の大統領候補同士のテレビ討論会(ディベート)が予定されています。 また、1回だけですが、副大統領候補同士のテレビ討論会も行われます。 私は、特に3回行われるオバマ候補とマケイン候補とのディベート合戦が大統領選の当否をかなり直接的に決定に導く、まさに天王山の戦いになると、過去行われました大統領選から予測しています。 オバマ候補は、民主党の予備選挙で争ったクリントン候補との間でもディベートでは劣勢を感じさせました。 さらに、8月に行われたキリスト教プロテスタント牧師を仲介に行われたマケイン候補との初のディベートの際にも、オバマ候補はやや劣勢と私の目に映りました。

あのように演説ではカリスマ性溢れるエネルギーと情熱、そして巧みな話術を持つオバマ候補ではあっても、どうも具体的な内容を深く突っ込まれるディベートの場となると、持ち分が良くないのです。 質問そのものを回避したり、ちぐはぐな応答であったりと、傍目から見ていても、心配と不安とが頭をもたげてきます。 その点、マケイン候補もクリントン候補も質問から一切眼をそらさず、正攻法で押してくるタイプでありますので、その辺のところを今後3回あるディベートでどうオバマ候補が打破していくことができるのか、非常に興味のあるところです。

最近、私のご紹介した英語で書かれた著書(浜地絵里 & 浜地道雄 著 ”Melting Pot or Salad Bowl?: 意外と知らないアメリカンライフ” <センゲージラーニング社> 刊)で初めて知ったのですが、アメリカのすべての選挙投票日は、いずれも火曜日になっています。 日本は、日曜日ですよね。 何で火曜日であるのかについては、アメリカがまだ偉大な農業国(今でもそうですが)であったその昔から、農民が1週間の中で街まで出て選挙をしやすかったのが火曜日であったためなのだそうです。 日曜日は教会での礼拝があるし、水曜日は地元で市場(マーケット)が開かれる日というスケジュールが決まっていたため、何もない火曜日が選挙の投票日として選ばれ、今日までのその制度が国民に何の疑問も持たれないまま継続しているということを知りまして、まさに目からウロコでありました。(私だけでなく、多分普通のアメリカ人もどうも知らないようです、この火曜日が投票日だということについては。)


Ken Sakai
President

kenfsakai@pacificdreams.org

   
Pacific Dreams Institute