Select your language English
o 翻訳トーク
o
o
o
o HRMトーク
o HRM書評

 

     
 

2008年7月号

「パートナーシップについて」

パートナー、あるいはパートナーシップという言葉は、日本にいてもアメリカにいてもよく耳にしますし、ビジネスの世界では洋の東西を問わず、特に頻繁に使われる傾向にあります。 “言うはやすし、行うは難し”とは、やはりよく聞くことわざですが、パートナーになること、あるいはパートナーシ”ップを育むことは、口で言うほどには簡単なことではありません。 それなのに巷でよく聞くのは、この言葉は言うのに易しく、聞くのに心地よく響く言葉だからなのではないでしょうか。

お互いがパートナーとして認め合い、それに基づいてパートナーシップを組んで活動していくには、双方でそれなりのコミットメントが必要ですし、双方の利害関係が先ずは一致していなくてはなりません。 最近ビジネス英語から使われ始めた、“Win-Win”という表現も日本語化して一部では使われ始めているようですが、ビジネスで“Win-Win”の関係を樹立すること自体決して生易しいことではありません。 “Win-Win”の関係やパートナーシップが、いとも簡単に出来上がるような記述をしているビジネス書や論評などが世の中に多く出回りすぎているような嫌いが私にはいたします。

“Win-Win”の関係やパートナーシップの樹立は、あくまでも最終的な到達目的地点なのであって、それ自体が結果として初めから存在しているわけではないのです。 それはひとつの長い険しい道のりなのであって、お互いの努力達成目標であります。 パートナーシップの最初の段階から、“Win-Win”の関係を構築しようとしても、多分それは無理があるのではないでしょうか。 むしろ、最初は、相手に花を持たせて、自分の方が労力の面でも余計にかけて、利益は逆に一歩引く、というよりは、最初から(仮に“Win-Win”を目指したにしても)利益至上主義では、パートナーシップの関係に行き着く前に、お互いが息詰まり状態、あるいは閉塞感に落ちってしまうことが目に見えています。 実際、多くの関係が“Win-Win”やパートナーシップの掛け声だけで何もないまま終わってしまうということは枚挙に暇がありません。

翻訳業界の中でもパートナーシップという掛け声はよく聞きますが、どれだけまじめに徹底してこの関係が成り立っているのか、はなはだ疑問に感じることがあります。 特にアメリカの中で翻訳会社を経営し、翻訳ビジネスを続けている中では、他の翻訳会社との間では実りのある有意義なパートーナーシップを確立するというのは、残念ながら稀有のことのようです。 もちろん、弊社では、北米の半導体関係のエンドユーザーの何社かとは、素晴らしいパートーナーシップを長年にわたって築いてきたのは紛れもない事実です。 しかしながら、エンドユーザーと同様に重要だと考えられる同じ業界内でのパートナーシップというのは、正直なところ、並大抵ではない前途多難の厳しい現実を感じております。

ご存知かもしれませんが、アメリカやヨーロッパでは、大手翻訳・ローカリゼーション企業が、地域で特徴のある優良翻訳会社や翻訳ソフト会社をM&A(企業の合併や買収)を通じて、吸収し、さらに巨大化し、規模を武器にして市場シェアを伸ばそうとしています。 その一方で日本の翻訳会社の中では、体力的に管理技術的にも欧米の翻訳会社をM&A出来るような企業は恐らく1社もないのではないかと思います。 また、全産業での過去の経緯からしてみても、日本企業が特に米国企業をM&Aして成功した例というのは、ブリヂストンがずいぶん前に買収したファイヤーストーンぐらいしかないとさえ言われているほどで、日本企業が海外で行う、特にアメリカで行うM&Aの難しさというのは、以前から頻繁に指摘されていることなのです。

その理由としては、何と言っても企業文化の違いが日米の間で著しくあるからではないかと考えられています。 それは何も日米の間だけではなく、文化的には近いと考えられているヨーロッパとアメリカの企業の間でのM&Aにも見られることなのです。 最近では、“世紀の合併”とまでいわれたドイツの自動車会社ダイムラー・ベンツとアメリカのビック3のクライスラーとの合弁会社“ダイムラー・クライスラー”が業績不振で昨年、アメリカの投資ファンドに売却されたことはまだ記憶に新しいところです。 ここでもドイツの企業文化やドイツ人の仕事のやり方とクライスラーのアメリカ的な企業文化が最後までうまくマッチし、機能しなかったのが大きな原因であったとニュースなどでは報道されていました。

このようにM&Aのように物事の白黒を契約などですべてはっきりさせるようなやり方では、所詮、国や文化や言葉が違う環境の中では、どうも機能しないのが普遍的のことのようです。 パートーナーシップは、もともとどらかが買った、買われたという間柄ではありませんので、お互いが許容できる範囲がM&Aとは違って、限りなく自由で尊重しあえる関係がベースとなっているはずです。 私は、欧米の大手翻訳会社が今後ともますますM&Aを軸として規模の拡大を図っていくのはほぼ間違いないことだと読んでいます。 そのような相手方に対して、日本の翻訳会社としてそれらM&Aを手をこまねいてみているのか、あるいは気がついたら、自社もそのような大手企業の傘下に収まってしまっていたとか、そのような状況に甘んじてしまうか、それとも小さい企業同士なりにパートナーシップを結んで、各社の強みを維持し、存在感を保っていくのか、今後はそのような選択を迫られる時期の来る日が早晩やってくるのではないかと察する次第です。

パートナーシップの模索やその樹立は、企業の生き残りのための道でもあると私は考えています。 これは、日本の翻訳業界だけのことではなく、世界的に効率が悪いといわれ、規模的にも小さい日本のサービス業全体に関しても言えることではないかと思います。 もちろん、海外のM&Aの荒波を受け入れて、その傘下入りするのも生きる道だとは思いますが、自社を存続させ続けるのもやはり生き残る選択肢なのではないでしょうか。 私は、今から16年前に太平洋の両端にある2つの国、つまりアメリカと日本との間でビジネス上での夢の実現達成に向けて、そのための両国の架け橋となるように、この会社を設立いたしました。 その理念は16年経っても何ら変わるところはありません。 日本企業との間での真のパートナーシップ確立に向けてこれからも日夜前進し続けてまいりたいと、会社設立時の企業理念をあらためて意識し、再確認する今日この頃であります。


Ken Sakai
President

kenfsakai@pacificdreams.org

   

View Ken Sakai's profile on LinkedIn

twitter

Pacific Dreams Institute