アンディ先生と私: トヨタが私に教えてくれたこと
パスカル・デニス 著
センゲージラーニング(株)
2007年12月30日刊・229ページ
本書は、閉鎖寸前(期限は1年に迫る)となったニュージャージーにある架空の老舗アメリカ自動車メーカー“テイラー・モータース”の製造工場を舞台にして、工場長の「私」ことトム・パパスをはじめ、各製造部門のアメリカ人マネージャーたちが、元トヨタの伝説的日本人製造技術者であるアンディ・サイトウ先生を工場立直しのための切り札的な「師」として迎え入れ、死に体の工場にトヨタ生産システム(TPM)からのさまざまなものの見方や考え方を習得して、工場運営が再建されていく過程を生き生きとした登場人物を通じて描いた、アメリカ版ものづくりの小説形式として物語が展開されているものです。
トヨタと聞くとカイゼンやカンバン方式などは皆様にもおなじみでありましょうが、PDCA(Plan:計画, Do:実行, Check:評価, Adjust:改善)のサイクルやホウシンカンリ(方針管理)、さらにタクトタイムなる和製英語も本書内では頻繁に顔を出していて、それぞれトヨタ語の持っているトヨタ流の定義と応用について、小説形式だからこそ、誰でも容易に理解が可能なように執筆の工夫が随所でなされています。
本書は、製造業界におけるノーベル賞とも称されている、生産システムに関する優れた研究に対して与えられる、“新郷賞”(Shingo Prize for Excellence in Manufacturing)の2006年度
の受賞作品なのです。 この新郷賞とは、日本の方々には馴染みがないのではと思いますが、元トヨタの生産技術者で、トヨタ生産方式確立に多大なる貢献と業績とを残された、新郷重夫氏をたたえて、1988年にアメリカで創設された賞であります。
アメリカのオリジナル版は、アメリカで“Lean Manufacturing” や”5S”、“JIT (Just-in Time) System、さらに”TPM” などの書籍やセミナー開催事業などを通じて、アメリカの製造業者たちに教育と啓蒙を提供しているProductivity, Inc. から発売になったものです。 このようなトヨタ生産方式を小説風に仕立て上げて読者をぐいぐいと小説の虚構世界に引き込んでいくという手法はきわめて新鮮でありますし、今までにもあまり例がなかったのではないかさえ思われます。
小説形式ですから、製造業の専門技術者である必要はさらさらなく、製造業以外の分野の方々が読んでいただいても、およそ人が働く現場周辺にあっては必ずや起こりうる数々の問題への解決糸口へのヒントとその現実的な手法とが本書の中には至るところにちりばめられていることがおわかりになると思います。 一見地味な本のように見えるのですが、トヨタ生産方式といわれても実際にはどうやって運用されているのかを理解する点においては、これ以上分かりやすい本はないんじゃないかと思えるほどです。 “掘り出し物”と呼ぶにふさわしい本に久し振りにめぐり合ったというのが私の偽らざる読後感でありました。
*Pacific Dreams, Inc. では、「アンディ先生と私: トヨタが私に教えてくれたこと」(センゲージラーニング刊:$30.00 Each, Plus Shipping & Handling $6.00)を在庫しておりますので、ご希望の方は、お電話 (503-783-1390) または、E-mailで bookstore@pacificdreams.org まで、ご連絡ください。
Ken Sakai
President
kenfsakai@pacificdreams.org
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