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2009年4月号

ものづくりの国とマーケッティングの国

今年の2月に日本に行っている間、日本の新聞やテレビを毎日見続けていますと、日本は、つくづく「ものづくり」の国なのだなとあらためて感じさせられます。 まず、「ものづくり」という言葉の響きがとてもよいのです。 この日本語に当たる英語としては、せいぜい ”Manufacturing” となるのでしょうか。 英語のこの ”Manufacturing” には、まさに製造業という意味と響き以外の何者でもなく、日本語の「ものづくり」に醸し出されるような創意工夫と磨き上げられた技能や修練とを通じて、従業員が高品質の工業製品を作り上げていく努力みたいな語感というのは、はっきりいって一般のアメリカ人たちは、ほとんどそのような響きは感じません。

そのため日本人が「ものづくり」という言葉から描き出す一種の“尊敬”の念が、この ”Manufacturing” の語感からは伝わってはきません。 伝わってくるものといえば、”Blue-collar  Worker”、“Union”、“Automobile Industry” といったところでしょうか。 尊敬の念など、生まれようがないですね、これでは。 アメリカでは90年代の後半から多くの製造業は、メキシコや中南米、そして中国や東南アジアに製造拠点の移転や統合を行い、結果としてアメリカ国内の製造業は空洞化し続けました。 唯一そのような移転を行わなかったのがアメリカ自動車産業であったわけです。

さて、こちらアメリカに日本から戻ってきますと、アメリカは、マーケティングの国でやってきているのだなと強く感じます。 まず、日本語の「ものづくり」に当たる言葉のないアメリカでは、製品はどこで作ろうが基本的に国民は眼中にはなく、安いコストで、そこそこの品質であれば、人々は、どこの国で作られた製品であるかなどに関しては、意識は高くありません。(ただし、昨年発生した中国製のペットフードでペットが死亡するような事件がまた起これば、話はまったく別なのですが。)

日本は、まず「ものづくり」ありきで、そこから順を追ってビジネスモデルを考えていくのではないでしょうか。 (日本では、むしろビジネスモデルを考えられるだけでも良い方なのではないかと思います。) 「品質の良いものを一貫して作っていれば、黙っていても売れるものだ」という昔ながらの神話みたいな考え方が未だに残っているようにさえ感じます。 いまどきそんな時代錯誤のようなことを考えている経営者がいるわけないとお叱りを受けそうですが、果たして実際のところはどうなのでしょうか。

その点、アメリカのビジネスモデルといいますと、まずは最初に「マーケティング」ありきで、ビジネスモデルが構築されていきます。 これは、多分にアメリカのビジネススクール、いわゆるMBAでのコースの中でこのマーケティング志向の教育が強調されているからであるからだと思います。 マーケティングがあるからこそ、新しいビジネスやサービスが生まれ、ビジネスモデルの構築が可能となるという考え方です。 そのために、インターネットのこの時代、ますます多様化した新しいマーケティング手法が巷では編み出され、それらは、日々進化しているとも申せます。

日本のものつくりの方々に今後最も必要となるのは、マーケティングの手法を知っていただくことではないのかとある種、確信しています。 マーケティングの基本を学び、世の中の新しい時流やトレンドに乗ることができれば、日本のものづくりの将来は決して悲観したものではないと申せます。 逆にアメリカでは、 ”Manufacturing” の復権が今後ともおぼつかないようであれば、自動車産業をはじめとして、製造業の海外移転に伴う空洞化はますます進み、雇用問題に深刻な痛手をもたらし続けるであろうことはまさに必至と申し上げられます。

オバマ政権の目指す環境や代替エネルギー分野におけるグリーン産業の復興とその雇用の中心は、いわゆるオバマノミックスは、まぎれもなく製造業であり、”Manufacturing” であります。 アメリカの景気対策が、伝統的な自動車産業からグリーン産業に移っていく過程の中で、”Manufacturing” の持つイメージがアメリカ人の意識の中に少しでもポジティブな流れのものに変わっていくことを期待してみたいと思います。これは政府の問題なのではなく、人々の意識にかかわる問題であるからです。

 


Ken Sakai
Pacific Dreams, Inc.
TOIN USA Inc.
kenfsakai@pacificdreams.org
ken-sakai@to-in.co.jp

   

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